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2015年11月22日 (日)

クレームへの対応-総集編(3)

  統合プロジェクトの分科会は言葉の混乱があり、チーム結成:forming段階でまず用語集を作り互いに理解できる共通語の用語集を作ることから始まった。特に略語は同じ3文字でも全く異なるケースがあった。そのため略語はすべて日本語表記として英文字・カタカナ・省略による略語は廃止した。あえて使う場合はフルスペルで使うことを申し合わせた。用語集の作成段階では2000~3000ぐらいあった語彙は80%にその部署でしか通じない造語や同じ意味でも表記が違う重複・派生語があり、最低限必要で根拠がある専門用語や技術用語にまとめると200前後になった。この決められた用語で会議が始まった当初は混乱もあったが数か月もするとすっかり定着して社内コミュニケーションもよくなった。理解が難しく複雑な内容ほど簡単にわかりやすく話し、聞く側も理解できないことは質問して確認することで相互理解が進むがそうしたコミュニケーションの基本ができていなかった。

  合併前は両社ともビジネス分野で業績を伸ばしていたがダウンサイジングと情報化社会の波が押し寄せ、スモールオフィスやホームオフィス(SOHO)へと市場は激変し、資本や実績がなくても技術力があれば設計以外をアウトソーシングするビジネスモデルの起業が雨後の竹の子のように乱立した。竹の子は瞬く間に竹藪になり、急速に奪われる市場を取り戻し、ビジネスを拡大するため合併後の重要方針のとしてSOHOへの事業展開が決まった。

  時を同じくしてPL法が発効となり、通常の障害でも欠陥品として対応を要求する声がコールセンターにも上がるようになってきた。企業ユーザーは保守サービスも含めて製品を購入、運用技術もあるのでコールは多いもののクレームに発展するケースは月に数件だったが、SOHO製品は製品知識がほとんどない一般ユーザーで修理代が高額になるとクレームに発展するケースが多かった。これまではある程度の障害発生を見積もって3年前後の保守サービス費用を含めていたが価格を低く抑えるため1年保証に限定し、保証期間の延長は
購入時にオプションとしたことがユーザーにうまく伝わっていなかった。

  ケース4.コミュニケーションの混乱がクレームに発展した問題

      顧客から障害についてのコールが入るとコールセンターで対応できる案件はマニュアル通り処理されるが、技術的な内容や顧客が感情的になっている案件は2段階でエスカレーションされる。合併前は90%以上がこの第1段階で処理されていたが合併直後は正しく情報が伝わらず顧客に何度も内容を確認したり、担当者が決まらずたらい回しにされるケースが増えた。創業時からの顧客がそうした扱いを受け(元)社長が謝罪するといった事態にもなった。

  社内の混乱した状況はインターネットの普及とともに流行りだした電子掲示板(BBS)に投稿され、それがマスコミに取り上げられ、「合併早くも破綻」などと騒ぎ立てられた。統合が完了するまでの3か月間、社長は何度も会見を行い、検察の取り調べのような記者の質問に真摯に答える姿勢から誠実さ・真摯さが伝わり、騒ぎは収拾した。

  ケース5.障害情報の隠蔽体質が招いた問題

       合併前に設計されて持ち込みとなった新製品は十分な確認もされないまま、最後の製品ということで押し切られる形で合併記念のキャンペーンとして発売された。その直後から障害の発生が製造ラインや現場から報告されていたのだが、隠蔽体質だったため内部処理され続け、3か月後になって消費者センターや当局から指摘を受けて問題が発覚した。社長は責任者や関係者を問いただしたが「会社のため」とか「お客様のため」とか言い訳をするばかりだった。出荷検査データは確かに規格内だったが再検査すると基準を超える製品もあったのでさらに追及するとデータを捏造や改竄したことがわかった。リコールで製品回収を行い収拾にはさらに3か月を要した。

 社長は責任者を解雇、関係者を降格や減給処分にした。ところがこれを不服として訴訟が起こされ問題はさらに大きくなってしまった。マスコミはこの時も事実を捻じ曲げて処分者を擁護したためその対応も困難を極めた。この騒動に乗じて旧勢力が乗っ取りをも画策した模様で激しい抵抗にあって一時は合併解消や分社も検討された。その窮地を救ったのが海外派遣組による不正なデータ操作や証拠隠滅の事実の暴露であった。

  この海外派遣組は高い専門能力を持った技術者や管理者であったが約50名で旧社内にあって協調性がないために組織から弾かれて海外ビジネス展開として体よく追い出された連中だ。旧本社のリストラの意図に反して理不尽な抑圧から解放された「はみ出し組」は水を得た魚のように嬉々として拠点を作り、販路を広げ、現地生産工場まで稼働させてしまった。この工場ではコストを下げるために国内の製品を生産していたがエンジニアの大半が去ってしまった旧本社に代わって製品開発を始め、それが合併直後に持ち込まれた新製品だった。直前まで合併の事実を知らされておらず旧本社への反感が高まっていた。追い打ちをかけるように障害が海外工場の責任であるかのような報告をされたためくすぶっていた怒りが爆発して旧本社の隠蔽工作した旧役員とその一派をを訴えるに至った。

  不正が明るみになるにつれて不利を覚った旧勢力は訴えを取り下げ派閥を作っていた管理職とともに身を引いた。こうして後に55日戦争と呼ばれた社内紛争は収拾、最悪のシナリオだった分裂は何とか回避されたが双方に禍根を残した。とりわけ旧本社に取り残された若手社員は将来を悲観して出社しなくなったり、心の病に罹るケースも出てきた。社長はこの若手社員と個別に面談し、海外ビジネスの目的や使命について熱く語り、海外展開要員としてすでに編成していたスタッフ50人とともに海外に送り出した。海外生活に順応できず何人かは脱落して日本に戻ったが、多くはダイナミックな海外ビジネスに魅了され、先輩社員やスタッフの手厚い支援もあって半年もたたないうちに成果を上げるようになった。

  心優しい若者は傷つき、挫折しやすいが目標や役割を与えてきちんと評価すれば伸びるものだ。合併前の会社では目標となるはずの先輩社員は日々派閥争いに明け暮れ、人間関係はぎくしゃくして疑心暗鬼で疑い深く誰も信じられる状況にはなかった。夢も希望もない日々を過ごしたに違いない・・・・。このころはまだエンジニアだった営業課長は海外組の壮行会に出席して何人かと話すうちに彼らの胸の内をそう感じた。「これからは会社とか仕事とかも大事だけどその前に自分が何をしたいか見つけてくれよな。どうしても辛かったら我慢しないで俺に電話くれよ。たぶん何の役にも立てないが話だけはいくらでも聞いてあげるよ。」そうして一人一人と握手して見送った。

  一連の騒動が収束して1つのチームとして合併後の会社が起動するまでには統合プログラムが完了してからさらに1年を要した。海外展開も軌道に乗り、既存の製品は海外移管が30%近くになった。国によっては合弁会社を設立したり、使用部品の10%を現地調達しないとビジネスの許可が下りないように法律が改訂され、その対応中にクレームに発展する問題が発生した。

  ケース6.パーツのばらつきが起こした品質問題

     現地調達にはISO9000認証は必須とし、書類審査や工程監査を経て仮契約を行い、詩作試験、量産試験、信頼性検査で購入が始まる。想定外の調達リスクを避けるため3社購買を原則としている。新製品は設計変更が行われて3か月後国内販売が再開した。モバイル機器が普及し始めた時期で新製品は持ち運びにはやや重い2.5Kg であったが操作性がよいと評判で、当初のクレームを乗り越えて徐々に売り上げを伸ばしていた。ところが夏場に気温が36℃を超える地方に出した製品の一部は動作が遅くなるという問題が発生した。スペックでは-15℃~60℃を保証していたにもかかわらず、不具合品の特性は常温では全く問題ないが恒温槽で温度を上げると同じ症状が再現した。  返品が相次いだが常温で検査すると正常と判定されるため修理の必要なしと判定されて顧客に返送された。そのようなやり取りが三回以上にもなるとさすがに顧客も我慢できずクレームになった。在庫品を調べると温度を上げても不具合が発生する製品と全く問題ない製品があることが分かった。さらに調べると電源供給モジュールのノイズが原因であることが分かった。常温では問題ないが構成部品の耐熱性にばらつきが大きいためノイズを発生して制御信号ラインに回り込み処理速度を低下させることが根本原因であることが分かった。場合によってはデータを消失させたり破壊する恐れがあるためリコールを申請、回収に6か月もかかった。

  この品質問題を機にISO9000の社内監査でコンプライアンスを厳しくチェックするようになった。その結果文書化だけで実際には行われていない内容が多く検出され、根本的に品質マネジメントの見直しが行われた。品質マネジメントの品質保証はコンプライアンスを重視、品質管理はシックスシグマを導入して強化を図った。全社を挙げて品質向上を目指す・・・といったスローガンを掲げたところでそれを具体的に実現する仕組み、管理、評価、改善-本来の意味でのマネジメントができていなければ紙に書かれただけの仕組みになってしまう。人が機械のように管理・制御できない以上、問題を起こしたらすぐに察知して大きくならないうちに解決する仕組みを作らなければならない。そのためには個人や組織のあり方から問い直さなければならないのかもしれない。それはかつて「哲学」と言われていた。心の中心(理念)とばらつき(行動)の範囲を決める-それが行動規範につながり、良心に従った行動-「
品質」を生むのではないだろうか。

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