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2015年11月16日 (月)

クレームへの対応-総集編(1)

   営業課長は見送りのターミナルで開発課長からこれまでのクレーム対応について聞き取り調査を行い、まとめておくように依頼された。帰国後、品質保証課長と品質マネジメントシステムを再構築するためだ。休暇とはいえスケジュールの半分は企業訪問やカンファレンス出席が組まれている。新社長の計らいで海外旅行をプレゼントされたことへの感謝の意もあった。

  クレームはその影響の拡大を防いだり、回避する方法はあるが完全に防止する有効な対策はないというのが営業課長の持論だ。クレームはその発生を如何に早く検知し、影響のステージを認識し、そのステージ以上に上げない対策を矢継ぎ早に講じる-それしか無い。それにはクレームのパターンを見極め、決められた対応プロセスを粛々と進めることだ。手始めに損害が数千万円以上に発展したクレームをまとめることにした。

  聞き取りしたクレーム事例は製品と関連付けて時系列にストーリーとして理解できるようにした。こうしたデータベースはかつては起こった事実をカードに箇条書きにして検索語をつけたものだが、全文検索が可能になった現在、検索のしやすさよりも問題の理解度と定着が重要になる。同じような局面になったときに想起させ、既知の問題は時を移さず対策を実行、未知の問題は現状分析、想定外の問題はリスク分析の判断を行うためだ。まずは発足当時のクレームの掘り起こしを行い3つのケースにまとめた。

 ケース1.クレーム自体が目的だった製品Eの規格問題

   15年前、前社長が当時は現役だったベテランエンジニアや有志社員を集めて親会社から独立した。その半年後、業界の常識を打ち破る低コスト高性能の製品Eを開発、華々しくキャンペーンを展開したことが功を奏して発売後3か月は順調に売り上げを伸ばした。ところが半年後になると規格に合わないという理由で返品が相次いだ。調査すると元親会社が製品Eの3か月後追うようにリリースしたほぼほぼ同性能の新製品が製品Eの規格と異なるためとわかった。元親会社の製品が国内ではデファクトスタンダードであるのに対し新製品Eはグローバルスタンダードに準じていた。前社長は日本製品のガラパゴス化に危機感を抱いておりグローバル化を目指していた。ところが業界では受け入れられず返品と激しいクレームに見舞われた。それでも外資系の顧客からは支持され、なんとかその後の5年間をもちこたえ、海外から安価な製品が輸入され国内規格はグローバル化せざるを得ない状況となり、売り上げを伸ばし始めた。国内に限らず海外の企業は自社の有利になるように規格の変更を行う。ゲームのルールを変えたらそのルールで戦うか、自社のルールに信念をもって戦うしかない。両者に適合するような戦術もあるがマーケットをしっかり見据えて将来性のあるセグメントを選択・集中する経営判断が求められる。

 ケース2.社内事情がクレームを大きくした問題

   製品Eのクレーム問題の対策として各部がばらばらに対応していたのを「お客様相談窓口」に集約しクレームを一括処理する仕組みに変えた。最初は週に数件だった案件が1か月後には5倍、3か月後には10倍と増え続け、コールセンターが新設された。相談窓口やコールセンターに集められたスタッフは各部の余剰人員-リストラ予備軍のため製品知識が深いわけでもなく、顧客対応のノウハウを熟知しているわけではなく問題解決は長期化した。問題が発生するとすぐにコールセンターに転送される仕組みで丸投げされた問題をスタッフが各部に事情聴収しながら顧客に対応せざるを得なかった。返品や返金に応じればそのコストの拠出を巡って紛糾し、技術的な問題は顧客の使い方が悪いという一点張りで一向に改善されない、品質に問題があってもテスト方法や製造規格を変えようとしない。そのうえ、問題が拡大・長期化して売り上げが減ると対応のまずさに責任転嫁される始末であった。やがてスタッフは半減し、ほとんど未処理で問題が長期間放置され、クレームはますます多く、深刻になった。

  ケース3.コミットを守らず、納期や要求が守れなかった問題

   ほどなくしてコールセンターが機能しなくなったためアウトソーシングに切り替えるようになった。コール件数は減らなかったが処理スピードが上がり、アウトソーシング前のように処理能力を超えることはなくなった。コールの50%は問い合わせや相談、25%は既知の問題でコールセンターの対応マニュアルの範囲で処理できた。残りの25%のうち、5%は社内の専門スタッフが関連部署に振り分けることによって解決を図った。20%は受注時に要求定義があいまいなことや機能説明が不十分でコミットした仕様が守れず、無理な納期のために大幅な遅延を起した問題だった。そのために数千万円のペナルティを払ったり、大形案件のキャンセルによる損失が発生した。


  このようにクレームのケースをまとめた後はWhy-5W1Hでなぜなぜ分析を行う。問題が起きるのは5W1Hの情報のどれかが欠けていることが多い。情報はむしろ不完全なほうが分析しやすいと開発課長が出発間際に言ったことを思い出した。

 Why-5W1H:起こった事実
  Why-What :なぜその製品やサービスに起きたのか
  Why-Were :なぜその場所や部分で起きたのか
  Why-When :なぜその時間やタイミングで起きたのか
  Why-Who  :なぜその組織や個人で起きたのか
  Why-Why  :なぜ原因や根拠、理由がわからないのか
  Why-How  :なぜ発生プロセスや問題の大きさがわからないのか

 同時にWhy Not-5W1H - 起こらなかった事実についても可能な限り調査しておく。問題の原因調査で陥りがちなのは詳細に不要な情報まで全体像をつかもうとすることだ。起こった事実と起こらなかった事実の比較によって原因はその違いから分かるものだ。全体像を分析したところで原因が細切れにされて真実はジグソーパズルのようになって本質が見えなくなってしまう。責任の所在が分からなくなるのは詳細すぎたり、対象規模が大きすぎる誤った調査の結果だ。何か月もかけて分厚い調査報告書を作ることが目的になり、効果的な対策は行われない。製品サイクルより長い調査が終わったころには次の製品に代わっている。調査スタッフの努力にもかかわらず報告が無駄になることがしばしばあった。調査の前に結果をどのように分析して判断に生かすかを決めておかずむやみに情報を集めても無駄な努力になることになかなか気づかない。

  営業課長はこうした過去の問題も振り返りながら聞き取りを進めた。

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