フォト
無料ブログはココログ

Six Thinking Hats リンク

« 製造部クレーム対応-根本原因の追及(前編) | トップページ | 製造部クレーム対応-根本原因の追及(後編) »

2013年7月 4日 (木)

製造部クレーム対応-根本原因の追及(中編)

  5月の連休明けから製品Zへの置き換えが始まり、変更した計画は予定どおり6月いっぱいで完了、本稼働となった。製品Qは引き上げられさまざまな試験を行ったがシミュレーションのとおり記憶装置の過熱以外の原因は見当たらなかった。交換した製品Zは発売当初は障害が発生したもののベテランエンジニアが問題が大きくなる前に未然に防ぎ次々と応急処置が採られ、設計にフィードバックされ初期流動期間が終わる頃には偶発故障レベルに終息していた。開発課長は根本原因の追及方法と有効な対策の実施についてベテランエンジニアに何度も確認したが「あなたたちが古い考え方と言っているKKD(勘と経験と度胸)だよ」と答えるだけだった。数年前から 「KKDから科学へ」を合い言葉にLean Six Sigma を全社的に導入している。

  根本原因の追及はRoot Cause Analysis(RCA)と呼ばれ、問題解決の起点になる。その方法や考え方はさまざまだが、問題を絞り込み、有効な対策を実行するという流れは同じだ。表現が違うのは成功事例が異なるからだ。問題が発生すると症状や規模に従った対策が講じられる。その対策の中でたまたま結果が良かった事例が成功事例となり、結果から原因が想定されその解決プロセスが既成の改善手法で脚色され、
関係が薄い人間までお手柄を分けようとするあまり〇〇道具や✕✕法といった実際には使ってもいない改善手法が説明の手段として総動員されるのだ。上層部になるほど成功談を好む傾向があるのでマネジメントに報告されるころには全く別の話になっていることがあった。<図表はクリックで拡大>
Rca

  問題が解決するかどうかはプロジェクトチームの洞察力や分析能力、創造力やマネジメントの判断力であって、改善手法はその手段に過ぎない。 問題が起きたときに手当たり次第思いつく対策を打ってみて、全体として効果があった対策から原因の所在を探り当て解決して行くというのが実際の姿ではないだろうか。成功した事例を説明できるなら失敗した事例も説明できるはずだが、失敗事例をこうした説明の道具で根本原因を追及した事例は皆無だ。

  その理由は、
失敗した場合は誰か1人が責任追及されるのがこれまでは慣習のようになっていたからだ。以前、営業課長は営業部長と問題を起こした客先に何度も謝罪して回り、約半年が過ぎた頃、辞職を決意していた。
思いとどまったのは・・・

「君が辞めたらこの悪習はなくならない。奥さんほど君のことを知らないが会社での君はよく知っているつもりだ。辛い気持ちはよく分かるが,俺と一緒に乗り切ってこれ以上君のような有能な人材が犠牲になるのを止めにしないか。」

・・・と営業部長に説得されたためだ。問題が解決するのは全体の3割程度、あとの7割のうち3割は客先から取引を停止され、3割は営業課長のように誰かしらが責任を取らされて会社を去り、1割は気づかれないように隠し続け事実は関係者だけが握っているようだ。

  こうした事実は新社長が設置した外部の役員で構成される倫理委員会の調査で次々と判明した。新社長は先代社長の孫にあたり、2年前から取締役として営業本部長を務めてきた。
業績悪化で若返りを望む声が増え、6月の取締役会議のクーデターで擁立され株主総会で旧役員の総退陣とともに承認された。この筋書きは新社長の父でもあった専務が計画、昨年から慎重に根回しされ、実現した。倫理委員会は「同族企業の弊害」を払拭するためにも断行しなければならず、旧社長派も同時に一掃された。

  それどころか組織もすべて解体され、事務処理など日常業務はアウトソーシングに移行、開発・試作・販売・営業は国内でプロジェクト・ネットワーク型に再編成、海外工場や拠点は現地法人化やEMS・OEMまたは譲渡され独立採算の協力会社として切り離された。現地で指揮を執っていた工場長や事業部長、指導していたエンジニア約300名はすべて8月までに帰国し、グローバル化事業プロジェクトを立ち上げる予定だ。約2000名いた社員の2割が行き場を失い、その半数の社員はどのプロジェクトにも属せず早期退職プログラムに応じ、残りの社員は業務移行先のアウトソーシング会社に再就職した。株主からはこうした換骨奪胎の施策が好感されこのところ株価は連日高値を更新している。

  プロジェクトチームはアメリカン・フットボールの構成と同じオフェンスとディフェンスに別れ、オフェンスは新製品や新規顧客開拓といった新しい分野を開拓するチームで5-10年後に会社をリードする若手中心に結成され、ディフェンスはライフサイクルの後半にある製品群の改善、プロセス改善や大口顧客、得意先との関係維持、満足度の向上-CRMや持続可能な企業をめざす-CSRといった現状の枠組みを維持するプロジェクトチームが中堅やベテランで結成された。結成された全チームはディシジョンパッケージと呼ばれる計画書を作成し、ゼロベース予算方式による費用対効果で順位づけ、上位から順に360チームに予算が配分された。オフェンスが3チームディフェンスが10チーム予算配分がされず次の四半期末までグローバル化事業プロジェクトの準備要員として仮配属が決定された。
Zbb2
  プロジェクトの運営は上位10チームのパッケージが社長決裁、50チームが取締役決裁、以下はプロジェクトチームのリーダーに決裁がゆだねられた。さらにSWOT分析により、各チームの戦略ポジショニングが行われた。
Zbb3
  オフェンスとディフェンスは4半期ごとに「審判団」の役割を持った外部の調査機関による市場調査、内部調査で対象となる市場でチームの交代が告げられる。新製品が立ち上がるとオフェンスチームからディフェンスチームへプロセスが渡され、既成製品が終息段階に入るとディフェンスチームからオフェンスチームへ次の製品開発に必要な顧客の要求や動向の情報が引き渡される。また四半期の途中でもリードを奪われたり、障害が発生して市場を失いそうなときにも交代が告げられる。これは「主コーチ」役の新社長と、バランスト・スコアカードの指標である財務・顧客・業務プロセス・成長戦略を担当する4人の取締役の「副コーチ」による「コーチ陣」が行う。 

  コーチ陣が正確な判断が出来るように定年退職したベテランが集められ、市場での活動状況が逐一報告される。報告内容はプロジェクトチームにも公開され、事実と異なる場合は修正され、報告ルールが変更されるか、報告者を交代するしくみになっている。プロジェクトチームは会社で使えるすべての権限が与えられるが、結果の責任はすべてのコーチ陣の判断の責任として処理される。誤りの大きさによっては新社長が退陣することもありうるので、経営リスク回避のしくみも同時に作られた。

  こうした変革によって顧客に直接対応し、瞬時に判断するしくみになったため、これまでの会社の目標達成から顧客の要求の達成がプロジェクトの目標になり、年度方針はすべて破棄された。顧客があるからこそ会社が存在するのだ。それを忘れ自社に都合の良い顧客不在のMissionやVision、経営目標など達成するはずがない。顧客と出会う「真実の瞬間」にその要求のすべてに尽くす覚悟と志が求められるのだ。

  製品を単に売るのではなくその製品によって顧客のどのような要求が実現するのか-モノが作り出す価値を提供するように考え方が変わった。これまでは製品に見合う顧客を探して売りつけていたが、これを機に顧客の要求を実現する製品を探して組み合わせ、顧客が最適なものを選ぶ選択肢を提供するように行動が変わった。顧客が必要とする価値を提供するのが商売では当たり前なのだが、「押し売り体質」からの変化があまりにも急だったため辞める社員もいた。いつも丸投げで要求仕様を明確に出来ない顧客は自社の要求をまとめる煩わしさから去って行った。変革には痛みがつきものだ。ここで止める
わけにはいかない。まだ始まったばかりなのだ。

  開発課長はオフェンスプロジェクトとして製品Vの開発チームのQB(指揮官)となった。プロジェクトをまとめる会議では6色ハット発想法を使って

  目的:Red Hat で顧客の要求にあった「目的」を直感的に選定した。
  開発目標:Black Hatで目的を達成するための条件として決めた。
  製品概要:QFDを元にBlue Hatでセールスポイントをまとめた。
  評価尺度:Yellow Hatで目標達成時の利益を予想した。
  リソース:Black Hatで最小限のリソースを求めた。
  却下された場合の結果:Black Hatで損失を想定した。
  他の水準:Black Hatでさらにコスト削減できないか検討した。
  代替案:Green HatのAlternativeでアイデアを出し合った。

のシーケンスでファシリテーションを行いパッケージをまとめた。
Zbb1
  稼働時の熱分布をシミュレーションした結果が実機に良くあてはまることが実験的にも確認され、開発課長はベテランエンジニアの知恵を移植したシミュレータが完成に近づいていることを実感した。

« 製造部クレーム対応-根本原因の追及(前編) | トップページ | 製造部クレーム対応-根本原因の追及(後編) »

ファシリテーション」カテゴリの記事