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2013年5月14日 (火)

製造部クレーム対応-根本原因の追及(前編)

  これまでの対策は消火活動に例えれば延焼防止-製品Zに置き替えることで問題の製品Qによる影響の除去で原因そのものは取り除けていない。根本原因を追及するときには「なぜなぜ5回」がよく使われていて問題は顧客の要求するレベルまでは改善していたので製品Qの記憶装置の過熱についても分析した。

  なぜ製品Qの記憶装置部分が過熱したのか
     →①発生した熱を十分排気出来なかったからだ
     なぜ十分排気できなかったのか
        →②冷却装置の能力が不十分だったからだ
        なぜ冷却能力が不十分だったのか
           →③設計を上回る蓄熱が起きたからだ
           なぜ蓄熱が設計値を超えたのか
              →④代替えで組み込んだ同等品だったからだ
              なぜ、同等品だと設計値を超える蓄熱が起きるのか
                 →⑤設計では考慮していない密集度が高くなったからだ


  今回の「記憶装置部分の過熱」のような問題は新製品を発売するたびに大なり小なり発生していた。対策としてシステムを冗長化して「過熱」したら切り替えるようにしていた。製品Qは制御装置に過熱を感知すると冷却装置のファンの回転数を上げるなどして単体で回避できるしくみを初めて採り入れた。国内で組み立てたシステムの稼働実験では良好な成績だったので、海外工場で生産した製品については生産の遅れもあって、十分な確認実験もせずに出荷してしまった。そこで製品Zと製品Qが稼働時にどのような熱分布になるかをサーモグラフィーで確認した。<図表はクリックで拡大> 
Cooling  なぜなぜ分析の①~④までは既知の原因でこのサーモグラフィーを使った実験で確認でき、製品Zに交換して本稼働させる応急処置の根拠となった。なぜなぜ分析のように原因追及のプロセスで既知の原因では分からなくなるところ-技術力や知見の限界-これが現時点での根本原因といえる。こうして既知と未知の境界として推定された根本原因を仮説として実験で真偽を検証しなければ真の原因かどうかはわからない。また密集度が実験で有意な要因として仮説が成り立ったとしてもなぜそれが過熱の原因となり得るかメカニズムとそれを制御する因子-加法性のある要因を確定できなければ過熱の原因を変えて好ましい結果を得ることは出来ない。

  そこで、営業課長は同期入社の技術部開発課長に放熱設計のシミュレータでなぜ過熱が起きるのか検証を依頼した。開発課長は次期モデルの製品Vで手一杯だったので徹夜してシミュレータが空いている深夜に解析を行い、早朝駆けつけた営業課長に検証結果を説明した。

   ① 冷却風向と直角に配置された記憶装置により渦流が発生、熱がたまる。
   ② 冷却風通信装置・制御装置を通って弱められ風量が不十分になる。
   ③ ①の原因で蓄熱場所の制御装置がシステム停止の誤動作を起こす。

  開発課長は製品Qの開発時点からこの問題に気づいており、有効な対策を考えつけないまま営業サイドから売り上げ挽回のための販売計画に押し切られてリリースしてしまった。開発課長は技術部長に何度もこの不具合について改善を訴えたが、すでに海外工場での組み立てが始まり、営業活動も記憶容量が向上することをセールスポイントとして売り込みにかかっており、その訴えは黙殺されたばかりか他言も禁じられた。

  開発課長はクレーム発生で社内が騒然としていたときに黙々と改善に向かっていてた。再現実験に立ち会ったとき記憶装置のレイアウトが主要因と推定されたので、記憶装置の容量は変えずにレイアウトをさまざまに変えて放熱特性のシミュレータでテストして最適条件を探していた。営業課長からの依頼はその最適条件がほぼ確定したタイミングであった。開発課長はその記憶装置のレイアウトから製品Vと名付けていて、営業課長には製品Qとの比較で説明した。  製品Vは冷却装置を記憶装置の直前に配置して風量を確保し、風向に対して取り付け角度を調整できるようにし、記憶装置の外形寸法のばらつきに対してもクリアランスを調整できるようにしていた。
Coolingv_2  営業課長は開発課長がクレーム発生後の数ヶ月どんな気持ちで過ごしていたかを思いながら説明を聞いていた。営業課長が技術部にいた頃、開発した新製品の性能や品質をめぐって技術部長と対立し、
社長に直訴するという非常手段で出荷を止めたことがある。それによって販売計画は大幅に遅れ、ようやく出荷できたものの営業課長の言ったとおり市場で仕様通りの性能が出ず、品質問題も発生して販売不振を招き、業績が落ち込んでしまった。その責任は判断を誤った技術部長に求められるべきだったが、開発リーダーだった営業課長に向けられ引責する形で理不尽にも人事異動で閑職に回されてしまった。営業部長は一連の流れから事情を知って、営業課長を営業部に招いた。

  それから5年の歳月が経っていた。激変する市場の要求は技術的な専門知識を必要とするようになり、営業課長は営業部員の技術指導にも力を発揮して信頼されるようになった。一方、同期の開発課長は淡々と仕事をこなすタイプで技術部長から信頼されるようになり、ベテランエンジニアが去った技術部で製品Qの開発プロジェクトを任された。もともと開発課長は創造力があり、ベテランからも頼りにされていた。製品Qはその集大成になるはずだったが現実は厳しかったようだ。

  営業課長は技術部を離れるとき飲み会でベテランエンジニアから言われたことがいまでも記憶に残っている。「会社は運だよな。同期でエリートと言われていた奴が海外工場を立ち上げて帰ってきたら席がなくなって、部長と喧嘩して結局辞めたよ。まっ、長く居たかったら喧嘩しないことだ。喧嘩しないで済む方法を探すことだな。辞めてもエンジニアはどこに行っても同じさ。頑固で自分を変えないから・・・」

  営業課長は説明を終わった開発課長を連れ出して飲みに行き久しぶりに昔話を聞いた。エンジニアの頑固さはその信念から来るのだ。頑迷とは違う。ほろ酔い加減で肩を組み、いつしか降りてきた夜霧のせいでネオンが滲んで見えた。

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