フォト
無料ブログはココログ

Six Thinking Hats リンク

« 製造部クレーム対応-感情を理解する | トップページ | 製造部クレーム対応-現状を把握する(後半) »

2013年4月 9日 (火)

製造部クレーム対応-現状を把握する(前半)

  翌週は問題点の整理と原因、そのリスクについて先方の購買部長や品質保証部など関係者に分かるように説明しなければならない。その資料作成のため土曜日だったが休日出勤で招集をかけた。問題が発生した当初はエンジニアが長々とした言い訳のような経緯や先方の使い方に問題があるように説明したために購買部長の怒りを買ってしまった。当のエンジニアはその問題が社内では「常識」の範囲だと説明していた。これまではエンジニアの「作文」を営業が苦労して翻訳して客先にわかりやすく説明していたため社内でしか通用しない「非常識」であることに気づいていなかった。このままでは真意が正しく伝わらないので営業課長はLeft-Hand Column を使ってエンジニアが先方に何を伝えたかったか分析した。購買部長に説明した内容をWhite Hat、その説明に対してどう反応したかをRed Hat、その反応から伝えたかった真意をBlack Hatで順番に話し合い、Blue Hatで表にまとめた。  <図表はクリックで拡大>Lefthand_2  若手エンジニアが中心になって開発した製品Yはベテランエンジニアからの製造技術の継承が十分にできていなかったため製造ラインでトラブルが多発、市場に流出して大問題となり、売り上げが大幅に落ちてしまった。そのためベテランエンジニアが後継機として製品Yを改良した製品Zの開発を成功させたのだがときすでに遅く、業績はさらに悪化、ベテランエンジニアはリストラによって早期退職してしまった。

  ロードマップで予定が決まっていた製品Qは残った若手エンジニアで開発されたが製造技術を熟知していないため海外の外注工場で急遽生産された。以前は先方の購買部長は公私ともベテランエンジニアとつきあいがあり、問題が発生したときにすぐに対応して本音で話し合える信頼関係にあったため、これまでは謝罪だけで済んでいた。しかし若手エンジニアはそうした関係を避けていたこともあって日頃からコミュニケーションがうまく取れずそれが緊急事態で一気に不信感を招く遠因であった。ベテランエンジニアは購買部長と仕事仲間のようにつきあっていただけで会社の機密は厳格に守っていたが潔癖な若手エンジニアたちには不正を働いているようにしか見えなかったのであろう。会社同士の関係は突き詰めれば人間関係でしかない。それはベテランと呼ばれるようになるまでわからない。

  さらに深刻なのは購買部長の会社を吸収合併された外資系の親会社はこの問題を機に調達先をコストの安い海外ベンダーに切り替えようと画策しており、謝罪だけでは収まらないことは明白だった。しかもベンダーとの私的な打ち合わせは厳格な倫理規定があり、問題解決は公式の場で正確な事実に基づいて責任の所在を明確にし、それに基づいてペナルティなど決められた措置を科す仕組みになっていた。とはいえ、海外ベンダーとは大量に購入する客としての立場を利用したコスト削減を強要しており、企業倫理という建前とコストという本音が矛盾しながらも主張する部門が違うため成り立ってしまう。

  こうした企業倫理や経営理念は理想で誰も反論できない正論であることが多いがビジネスに方程式があるならば現実の結果は理想の近似式ではなく、不等式といえる。結果が成功した企業はその結果よりも何倍も大きい理想を語り、こうした成功事例を元に喧伝するのはどれももっともらしく作られた自慢話でしかない。成功を語る経営者やコンサルタントは多いが失敗が語られることは皆無に近い。そのうえ、成功は過大評価され、失敗は過小評価され語られることはないので実際には失敗は成功の数よりはるかに多い。

  営業課長はバブルとその崩壊で経営者やコンサルタントの行動をつぶさに見てきた経験から持続可能な会社にするにはそのような言動に惑わされず、社内のリソースを正確に把握してその能力を引き出し、進むべき道を選択して集中させる以外にはないと思うようになった。会社は経営者や社員の能力以上には決してならない。先代の社長が立志伝中の人物だったために過大評価され、判断を誤り、いまは道に迷っているだけだ。

  営業課長は系統図を使って購買部長に伝わらなかった真意について担当営業ならどう伝えるか妥当な説明の手段をYellow Hatで聞き出し、それぞれについて何が問われているか状況分析を行い、先方の購買部長が期待している説明かどうかを直感的にRed Hatで判断し、期待されている項目について具体的な対策をGreen Hatで考案し表にまとめた。
Tree
  作表が終わると正午をすでに回っていたので営業課長は午前中に話し合った内容と成果物について簡単にまとめ、会社から許可を得ているので少し豪華な昼食をとろうと言って近くのイタリアンレストランにメンバーを連れて行った。午後は、問題の経緯や想定原因について分析することにした。

« 製造部クレーム対応-感情を理解する | トップページ | 製造部クレーム対応-現状を把握する(後半) »

ファシリテーション」カテゴリの記事